古代の都、華やかな江戸の町、そして日本各地に伝わる祭りや民謡。日本の歴史や伝統文化を、独自の吹奏楽作品として描いてきた作曲家が、櫛田胅之扶(くしだ てつのすけ/Tetsunosuke Kushida)です。
《飛鳥》《元禄》《火の伝説》などの代表作に加え、1981年度の課題曲《東北地方の民謡によるコラージュ》、1994年度の課題曲《雲のコラージュ》などでも知られています。その音楽には、日本の伝統的な旋律や打楽器の響きを生かした、櫛田胅之扶ならではの世界が広がっています。
この記事では、櫛田胅之扶の代表的な吹奏楽曲22作品を、成立背景や聴きどころ、演奏動画とともにご紹介します。コンクール自由曲の定番から、歴史や文学を題材にした作品、珍しい独奏楽器を伴う曲まで、ぜひお気に入りの1曲を探してみてください♪
飛鳥
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約8分45秒(1994年改訂版)
《飛鳥》は、古代日本の都が置かれた飛鳥地方を題材にした、櫛田胅之扶の初期の代表作。1969年に作曲され、後に1994年改訂版がまとめられました。
飛鳥時代の文化や歴史に思いをはせながら、日本的な旋律と打楽器の響きを味わいたい作品です。フルートやクラリネット、サクソフォーンなどに現れるソロにも耳を傾けてみてください。
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元禄
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約6分30秒(2014年版)
江戸時代の元禄文化を音楽で描いた《元禄》は、櫛田胅之扶の名を広く知らしめた吹奏楽作品。コンクール自由曲としても長く取り上げられています。
人々が行き交う街のにぎわいを思わせるリズム、情感豊かな中間部、そして祭りの熱気を伝える和太鼓が聴きどころ。2014年には20人程度から演奏できる小編成版も出版されました。
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東北地方の民謡によるコラージュ
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約5分30秒(原曲の参考録音)
《東北地方の民謡によるコラージュ》は、1981年度全日本吹奏楽コンクール課題曲B。日本各地の民謡を題材にした作曲者の作品群の中でも、よく知られる1曲です。
東北地方に伝わる民謡の節回しを、吹奏楽の多彩な音色で組み合わせています。原曲のほか、小編成・フレキシブル編成への再構成もあるため、動画や楽譜では版の違いを確認したいところです。
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※掲載動画は2011年版による演奏です。
雲のコラージュ
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約6分40秒(1997年改訂版の参考録音)
《雲のコラージュ》は、1994年度全日本吹奏楽コンクール課題曲IVとして知られる作品。題名にある「コラージュ」は、異なる素材を組み合わせて一つの作品を作る表現を指します。
移ろい続ける雲のような音色や曲想の変化を、吹奏楽ならではの響きで楽しみたい1曲。1997年改訂版や2011年の小編成版などがあるので、演奏を探すときは版にも注目してみてください。
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※掲載動画は2011年版による演奏です。
組曲「斑鳩の空」
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約10分45秒(1997年改訂版)
《斑鳩の空》は、奈良の斑鳩の歴史的な風景を描いた全4楽章の吹奏楽組曲。京都・大谷高等学校吹奏楽部のために書かれ、1997年に改訂版が出版されました。
「まほろば」「夢殿」「里人の踊り」「斑鳩の空」という4つの場面が並びます。穏やかな古都の情景から人々の踊りへと視点が移る構成が魅力で、楽章ごとの表情を聴き比べるのも楽しい作品です。
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火の伝説
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約7分(2018年・平成決定版)
京都の祭礼に息づく「火」を題材にした《火の伝説》は、櫛田胅之扶らしい日本的な世界観が際立つ吹奏楽作品。京都橘高校吹奏楽部による初演後、さまざまな団体で演奏されてきました。
おけら火、大文字の送り火、鞍馬の火祭りという京都の行事が着想のもと。静かな祈りと祭りの激しさを思わせる対比が印象的で、2018年には作曲者による「平成決定版」が出版されました。
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交響組曲「秀吉」~もうひとつの太閤記
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約17分(全5楽章)
《交響組曲「秀吉」》は、豊臣秀吉の生涯を題材にした全5楽章の大規模な吹奏楽作品。戦国時代の人物と歴史を、音楽による絵巻物のように描いた組曲です。
約17分の全曲版に加え、組曲をもとに約6分50秒へ再構成したコンクール向けの《秀吉》もあります。演奏動画を探す際には、全曲版か短縮版かを確かめてみてください。
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※掲載動画は全曲版と短縮版の収録範囲を確認していません。
秋庭楽
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約6分50秒(2019年版)
《秋庭楽》は、雅楽のモチーフを吹奏楽へ取り入れた作品。作曲者が「現代の雅楽」と位置づける音楽で、2019年には小・中編成向けの改訂版が発表されました。
日本の伝統芸能にも通じる「序・破・急」の流れを軸に、静かな始まりからリズムが躍動する後半へと発展します。フルートのソロと打楽器の響きにも注目したい1曲です。
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華音櫻來
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約9分
《華音櫻來(かのんおうらい)》は、京都の長い歴史と人々の営みを題材にした吹奏楽作品。御所での優雅な宴や、町衆のにぎやかな祭りが音楽の中に描かれます。
ピッコロ、オーボエ、フルート、トランペットが受け持つ情感豊かな旋律と、後半を盛り上げるティンパニが聴きどころ。和太鼓や締太鼓を交えた、櫛田作品らしい色彩を楽しめます。
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雪月花
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約7分50秒(2011年版)
《雪月花》は、雪・月・花という三つの景物に寄せる日本人の感性を題材にした作品。2011年版は小編成の吹奏楽でも取り組めるようにまとめられています。
三つの言葉が呼び起こす季節感や静かな情景を思い浮かべながら聴きたい1曲です。力強い祭礼音楽とは異なる、櫛田胅之扶の繊細な和の表現にも触れられます。
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一休禅師~いま宿花知徳の道へ~
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約8分
《一休禅師》は、室町時代の禅僧・一休宗純の生き方を題材にした吹奏楽作品。戦乱や社会の混迷が続いた時代を背景に、独自の信念を持って生きた人物に迫ります。
童話で親しまれる「とんちの一休さん」とはひと味違う、歴史上の一休の姿を思い浮かべてみてください。厳しさと人間味の両方を感じながら聴きたい作品です。
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舞楽II
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約11分50秒
《舞楽II》は、日本の宮廷舞踊である舞楽に着想を得た作品。1995年の世界吹奏楽祭でも演奏された、作曲者の日本的な作風を象徴する1曲です。
箏や雅楽打楽器の響きが作品の大切な要素になっており、通常の吹奏楽曲とは異なる音色を楽しめます。演奏会で取り上げる場合には、伝統楽器の準備も含めて検討したい作品です。
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秋の平安京
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約6分50秒(2019年版)
《秋の平安京》は、1995年にスイスの音楽祭からの委嘱で生まれた作品。京都の秋と平安時代の人々の感性を、吹奏楽の響きに重ね合わせています。
木管の穏やかな音楽から秋風を思わせる速い3拍子へと進み、最後は季節の移ろいを惜しむように静まります。2019年には2管編成を中心とする改訂版も出版されました。
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尺八と吹奏楽のためのフィギュレーション
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約9分30秒
《尺八と吹奏楽のためのフィギュレーション》は、尺八を独奏楽器として迎える協奏的な作品。日本の伝統楽器と西洋の吹奏楽が出会う、櫛田胅之扶ならではの編成です。
尺八独特の息づかいや音色を中心に、管楽器と打楽器がどのような響きを重ねるのかが聴きどころ。一般的な吹奏楽編成にはない独奏楽器が必要な点にも注意してください。
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組曲「星へのきざはし」第1部
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約13分(全3曲)
《星へのきざはし》第1部は、1997年に大阪市音楽団によって初演された3曲構成の吹奏楽組曲。夜空に広がる星の世界を、それぞれ異なる場面として描きます。
「ミルキーウェイ」「蠍座」「Cygnus・愛の歌」という曲名からも、宇宙への想像が広がります。アルトサクソフォーンやトロンボーンのソロにも注目してみてください。
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風雅
作曲:櫛田胅之扶
《風雅》は、江東青少年吹奏楽団の定期演奏会のために委嘱された作品。2007年には音楽之友社の『バンドジャーナル』付録として楽譜が発表されました。
題名の「風雅」には、洗練された趣や詩情といった意味があります。日本の伝統音楽を大切にしてきた櫛田胅之扶が、吹奏楽でどのような表情を描いたのか、ほかの作品と聴き比べたい1曲です。
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北斎~浮世絵 冨嶽三十六景から3つの情景
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約9分10秒
《北斎》は、葛飾北斎の浮世絵《冨嶽三十六景》から3枚を選び、その印象を吹奏楽にした作品。音楽を通して日本の美術を味わえる、ユニークな1曲です。
題材は「凱風快晴」「相州梅沢庄」「神奈川沖浪裏」。赤富士の雄大な姿、鶴が舞う景色、荒波に挑む船という、対照的な情景が描かれます。絵を見ながら聴くのもおすすめです。
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芭蕉~奥の細道 パラフレーズ
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約8分10秒
《芭蕉》は、俳人・松尾芭蕉の紀行文『おくのほそ道』をもとにした吹奏楽作品。旅の途中で詠まれた俳句の印象を、音による風景として描いています。
「パラフレーズ」とは、もとの題材をもとに自由に表現を広げること。旅先の風景や季節の気配を想像しながら、短い詩の世界が吹奏楽へと広がる面白さを感じたい1曲です。
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日本の旋律による三つの情景
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約6分50秒
《日本の旋律による三つの情景》は、岐阜青少年吹奏楽団の委嘱で書かれた作品。年齢も演奏経験もさまざまな奏者が集まるバンドのために、親しみやすい音楽として作曲されました。
青々とした畑が広がる昼の風景、夕暮れに聞こえる歌、そしてにぎやかな祭りへと情景が移ります。ピッコロのソロや和太鼓の響きが、身近な日本の風土を伝えてくれます。
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風のらぷそでぃ
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約8分50秒(協奏曲版)
《風のらぷそでぃ》は、1998年に京都府立商業高等学校吹奏楽部の記念演奏会のために委嘱された作品。ユーフォニアム、またはトロンボーンを独奏楽器として迎える協奏曲です。
独奏楽器と吹奏楽が掛け合う、通常の合奏曲とは違った魅力があります。原曲の主題を用いた小編成向け《ウインド・アンサンブルのための「風のらぷそでぃ」》も出版されています。
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※掲載動画は独奏楽器を伴う協奏曲版ではなく、小編成向けに再構成された吹奏楽版です。
雅風断章
作曲:櫛田胅之扶
《雅風断章》は、櫛田胅之扶の吹奏楽作品のひとつ。1990年代の吹奏楽コンクールの演奏記録にも作品名が残っています。
日本の伝統音楽を吹奏楽で表現してきた作曲者の作品を広く知るうえで、こうした作品も紹介しておきたいところ。ほかの代表作とあわせて、そのレパートリーの幅に触れてみてください。
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虹色のファンタジー
作曲:櫛田胅之扶 / 演奏時間:約6分30秒(小編成吹奏楽版)
《虹色のファンタジー》は、虹の7色から着想を得て、七つの異なるイメージを描いた作品。2025年には小編成吹奏楽向けの楽譜が出版されました。
虹を見つけたときの晴れやかな気持ちや、これから歩き出そうとする前向きな感覚がテーマになっています。フレキシブル7重奏の動画もありますが、吹奏楽版とは編成が異なる点に注意してください。
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※掲載動画はフレキシブル7重奏版です。本文で紹介した小編成吹奏楽版とは編成が異なります。
作曲家について
櫛田胅之扶(くしだ てつのすけ/1935年京都生まれ)は、日本の作曲家。京都教育大学で数学を学びながら作曲を始め、邦楽に親しんで育った経験を生かして、伝統的な日本の旋律や祭礼文化を取り入れた吹奏楽作品を数多く発表しました。《飛鳥》《火の伝説》などのほか、1981年と1994年の全日本吹奏楽コンクール課題曲も作曲。1995年には日本吹奏楽アカデミー賞の作曲部門を受賞しています。
