激しいリズム、緻密な和声、そして管楽器が鮮やかに響き合う音楽。日本の吹奏楽界で数多くの作品が演奏されている作曲家が、高 昌帥(こう・ちゃんす/Chang Su Koh)です。
《陽が昇るとき》《ウインドオーケストラのためのマインドスケープ》《吹奏楽のための協奏曲》など、コンクール自由曲として親しまれる大作をはじめ、朝鮮半島の伝統音楽を題材にした作品や、小編成向けの曲まで幅広いレパートリーがあります。
この記事では、高昌帥の代表的な吹奏楽曲36作品を、成立背景や聴きどころ、演奏動画とともにご紹介します。コンクールや定期演奏会の選曲はもちろん、新しいお気に入りの曲探しにも役立ててください♪
吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約30分
高昌帥の代表作として、まず聴いておきたいのが《陽が昇るとき》。全国の吹奏楽コンクールで長年取り上げられてきた、全4楽章の大作です。
「衝動」「情緒」「祈り」「陽光」という4つの楽章が、異なる表情を見せながら一つの大きな流れを描きます。コンクールでは抜粋演奏も多い作品ですが、全曲を通して聴くと、音楽のつながりがいっそう鮮明になります。
演奏を聴く
ウインドオーケストラのためのマインドスケープ
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約16分
《マインドスケープ》は、複雑なリズムと繊細な響きを兼ね備えた、高昌帥の代表的な吹奏楽作品。A-Winds奈良アマチュアウィンドオーケストラの委嘱で生まれました。
打楽器による幻想的な序奏のあと、激しく訴えかける音楽と、静かに歌う音楽が対照をなします。題名は「心象風景」の意味。対照的な部分を結ぶ共通の動機にも耳を傾けたい作品です。
演奏を聴く
吹奏楽のための協奏曲
作曲:高 昌帥
吹奏楽団全体を一つの大きな独奏楽器のように扱う《吹奏楽のための協奏曲》。5つの楽章からなる、幅広い音楽表現を楽しめる大作です。
「Maestoso」「Pregando」「Scherzoso」「Affettuoso」「Festivo」という楽章名からも、作品の多彩な性格が伝わります。異なるテンポや音色が次々と現れ、管楽器と打楽器のさまざまな組み合わせが聴きどころです。
演奏を聴く
ウインドオーケストラのためのバラッド
作曲:高 昌帥
《バラッド》は、コンクールの自由曲としても繰り返し選ばれている高昌帥の作品。題名から想像する穏やかな歌だけでは収まらない、劇的な表情を持っています。
力強い響きと歌うような旋律が交錯する音楽は、合奏全体の表現力を試す題材にもなりそうです。同じ作曲家の《マインドスケープ》と聴き比べると、音楽の緊張と解放の扱い方にも注目できます。
演奏を聴く
アッフェローチェ
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約10分
《アッフェローチェ》は、春日部共栄高等学校吹奏楽部の委嘱によって生まれた作品。高昌帥らしい密度の高い音楽が展開します。
題名は、愛情深い表情を示す「Affettuoso」と、荒々しさを表す「feroce」を組み合わせた造語です。柔らかな歌と激しいエネルギーがどのように共存するか、そんな対比を楽しみたい1曲です。
演奏を聴く
コリアン・ダンス
作曲:高 昌帥
《コリアン・ダンス》は、高昌帥のルーツにつながる朝鮮半島の音楽文化に触れられる作品。日本の吹奏楽コンクールでも演奏記録が残っています。
打楽器のリズムや舞曲らしい身振りが、吹奏楽の多彩な響きと結びつくところに注目。高昌帥の作品に見られる民族的な要素を知る入口としても面白い曲です。
演奏を聴く
吹奏楽のためのラメント
作曲:高 昌帥
《吹奏楽のためのラメント》は、2002年度全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅰに選ばれた作品。高昌帥の名前を広く知らしめた初期の重要作です。
「ラメント」は嘆きを意味する言葉。華やかさで押し切る音楽ではなく、深い感情を伝える旋律や和声が印象に残ります。課題曲という限られた時間の中にも、表現の幅が凝縮されています。
演奏を聴く
吹奏楽のための「ワルツ」
作曲:高 昌帥
《吹奏楽のための「ワルツ」》は、2018年度全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅲ。高昌帥が課題曲として送り出した、もう一つの作品です。
ワルツという親しみやすい題名でありながら、音色の重なりや拍の感じ方には独特の工夫があります。華やかな舞踏のイメージだけでなく、内声の動きにも耳を向けると新しい発見がありそうです。
演奏を聴く
雷神~ソロ・パーカッションとウインドオーケストラのための協奏曲
作曲:高 昌帥
《雷神》は、一人の打楽器独奏者と吹奏楽が向き合う協奏曲。打楽器奏者・寺山朋子への委嘱作品として生まれました。
夜の静けさを思わせる前奏から始まり、音楽はしだいに激しさを増していきます。ソリストの圧倒的な運動量に加え、吹奏楽と打楽器の駆け引きが見どころ。演奏会で取り上げる際は、独奏者の存在が大きな鍵になります。
演奏を聴く
パンソリック・ラプソディ
作曲:高 昌帥
《パンソリック・ラプソディ》は、朝鮮半島の伝統的な語り物音楽「パンソリ」を題材にした作品。高昌帥の民族音楽への関心が表れています。
パンソリは、歌と語りを織り交ぜて物語を進める芸能です。吹奏楽という編成の中で、声に由来する音楽的な身振りをどう感じられるか。題材を知ってから聴いてみたい1曲です。
演奏を聴く
ウインドオーケストラのためのエッセイ
作曲:高 昌帥
《エッセイ》は、全国大会でも取り上げられた演奏記録を持つ吹奏楽作品。高昌帥の作品をさらに掘り下げたい人におすすめしたい1曲です。
「エッセイ」という題名にふさわしく、ひとつの音楽的な考えがどのように形を変えていくかを意識して聴いてみましょう。有名作とは違う高昌帥の表現にも出会えます。
演奏を聴く
トリプロ・トリプルム
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約8分20秒
《トリプロ・トリプルム》は、東京隆生吹奏楽団の委嘱作品。若々しく躍動する音楽と、精巧な和声の展開が魅力です。
タイトルには3拍子を意味する言葉が使われています。冒頭の旋律が姿を変えながら発展し、壮大なコラールへとつながっていく構成が印象的。楽器間で受け渡される音楽の流れにも注目してください。
演奏を聴く
ウインドオーケストラのためのヴァニタス
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約6分30秒
《ヴァニタス》は、短い演奏時間の中に高度な技術と緊張感が詰まった作品。吹奏楽コンクールでも演奏記録があります。
密度の高い響きや瞬間ごとの音楽の変化を、どこまで鮮明に表現できるかが聴きどころ。約6分半という長さから、長大な作品とはまた違った集中力を感じられます。
演奏を聴く
吹奏楽のための組曲「サンサーラ」
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約20分
《サンサーラ》は、全4曲で構成される吹奏楽のための組曲。タイトルには輪廻や生と死を連想させる響きがあります。
「ファンファーレ」「エレジー」「回想」「歓喜」にあたる4つの曲が、異なる表情を描きます。オーボエやイングリッシュホルンなど、木管楽器のソロにも注目して聴きたい作品です。
演奏を聴く
キメラ~ウインドオーケストラのための~
作曲:高 昌帥
《キメラ》は、吹奏楽コンクールの全国大会にも登場した作品。題名には異なるものが組み合わさった存在を意味する言葉が使われています。
ひとつの性格に収まりきらない音楽の変化が魅力で、高昌帥らしい色彩感を楽しめます。何が対照をなし、何が作品全体を結びつけているのかを考えながら聴くのも面白そうです。
演奏を聴く
ウインドオーケストラのためのナイトフォニー
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約10分30秒
《ナイトフォニー》は、大津シンフォニックバンドの委嘱作品。「夜」と「響き」を組み合わせた題名に、作曲者の発想が込められています。
作曲者は、以前に書いた木管五重奏とピアノのための《夜の響き》の続編のような気持ちで作曲したと説明しています。各パートにソロやソリがあり、細かな音色の受け渡しを味わえます。
演奏を聴く
ウインドオーケストラのためのディテュランボス
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約7分20秒
《ディテュランボス》は、古代ギリシャで酒神ディオニュソスをたたえた歌に由来する題名を持つ作品。大津シンフォニックバンドの委嘱によって生まれました。
作曲者は限られた旋律・リズム・音階の素材を用い、明瞭な三部形式でまとめています。激しさを持つ音楽が、少数の材料からどう組み立てられていくかを味わいたい1曲です。
演奏を聴く
チルチェ
作曲:高 昌帥
《チルチェ》は、朝鮮半島の伝統音楽で用いられる複雑なリズム「チルチェ」を中心に据えた作品。A-Winds奈良アマチュアウィンドオーケストラの委嘱作です。
拍のまとまりが次々に変わる独特のリズムが、音楽に強い推進力を生み出します。打楽器が重要な役割を担うため、リズムの仕組みに注目して聴くといっそう楽しめます。
演奏を聴く
ファンタジア(Fantajia)
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約9分20秒
《ファンタジア》は、アメリカのベイラー大学ウィンドアンサンブルの委嘱作品。題名のつづりが一般的な「Fantasia」と異なる点も特徴です。
作曲者は、東洋的な趣も感じられるそのつづりを気に入ったと語っています。伝統的な形式に縛られず、緩急さまざまな場面が自由につながっていく音楽を楽しんでください。
演奏を聴く
ムジカ・クインクウェ・プレナ
作曲:高 昌帥
《ムジカ・クインクウェ・プレナ》は、全日本吹奏楽コンクールの全国大会でも演奏された作品。高昌帥の比較的新しい作風を知る候補として外せません。
作品名だけでは音楽の姿を想像しにくいからこそ、冒頭の音の置き方や各声部の重なりに注意して聴いてみたいところ。高昌帥作品に共通する、響きの構築の面白さを探せます。
演奏を聴く
セプトゥプルム・メトゥルム
作曲:高 昌帥
《セプトゥプルム・メトゥルム》は、曲の始めから終わりまで7拍子で書かれた、大編成向けの難曲。拍子そのものが作品の大きな個性になっています。
7拍子といっても、常に同じ感じ方をするとは限りません。拍の分かれ方や強弱の置き方によって、音楽がどう表情を変えるか。リズムの面白さをじっくり聴きたい作品です。
演奏を聴く
吹奏楽のためのヴェリタス
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約9分45秒
《ヴェリタス》は、浜松聖星高等学校吹奏楽部の委嘱作品。題名はラテン語で「真理」を意味します。
作曲者は「VERITAS」と「FALSITAS(虚偽)」の文字を音名へ置き換え、その音列から生まれる動機を対立させました。言葉の意味が音楽の仕組みにまで入り込んだ、発想の面白い作品です。
演奏を聴く
桜花の光跡
作曲:高 昌帥
《桜花の光跡》は、吹奏楽コンクールでの演奏記録が残る作品。高昌帥のレパートリーを広く見渡すうえで加えたい1曲です。
桜を思わせる詩的な題名が印象に残りますが、音楽の内容はタイトルの印象だけで決めつけずに聴きたいところ。旋律の動きや響きの変化から、自分なりの情景を見つけてみてください。
演奏を聴く
優しい花たちへ
作曲:高 昌帥
《優しい花たちへ》は、コンクールでも演奏されている高昌帥の作品。題名に惹かれて選曲候補に加える人もいるかもしれません。
繊細な表情を連想させる作品名と、実際の響きとの関係を楽しみたい1曲です。大作の多い高昌帥の作品一覧の中で、こうした題名の作品にも目を向けるとレパートリー探しが広がります。
演奏を聴く
Dances for Wind Orchestra
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約6分50秒
《Dances for Wind Orchestra》は、異なる文化の舞踊音楽的な発想を一つにまとめた作品。小編成版と大編成版があり、選曲時には版の確認が必要です。
アメリカのポピュラー音楽を思わせるリズム、ヨーロッパのワルツ、朝鮮半島の伝統的なリズムという3つの素材が登場します。違う文化の音楽が、ひとつの構成の中で出会うところが魅力です。
演奏を聴く
ユーモレスク
作曲:高 昌帥
《ユーモレスク》は、高昌帥の作品の中では、親しみやすい題名が目を引く1曲。コンクールの演奏記録にも登場します。
ユーモレスクとは、一般にユーモアを含んだ器楽曲を指す言葉です。この作品でも、リズムやフレーズの細かな表情に耳を向けることで、作品名とのつながりを探せそうです。
演奏を聴く
吹奏楽のための「トライトーン」
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約8分
《トライトーン》は、音楽用語をそのまま題名にした作品。高昌帥の響きへのこだわりを意識して聴きたい1曲です。
「トライトーン」は増4度・減5度にあたる音程のこと。不安定で緊張感のある響きを生みやすい音程ですが、その名称が音楽全体でどう生かされるのかが興味深いところです。
演奏を聴く
クヮドゥルプル・クヮルテット
作曲:高 昌帥
《クヮドゥルプル・クヮルテット》は、16人で演奏する室内吹奏楽作品。一般的な大編成曲とは違う、楽器同士のやり取りを楽しめます。
4人ずつのグループを組み合わせる発想が題名にも表れています。一人ひとりの音がよりはっきり聞こえる編成だからこそ、精密なアンサンブルの魅力が際立ちます。
演奏を聴く
ウインドオーケストラのためのノスタルジア
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約8分50秒
《ノスタルジア》は、グラール ウインドオーケストラの委嘱作品。郷愁を誘う響きから、この題名が付けられました。
短く途切れる、ため息のような楽句と、長い息で歌う旋律の対比が作品の中心です。大きな音で圧倒するだけではない、高昌帥の歌の魅力を味わいたい1曲です。
演奏を聴く
コラールとトッカータ
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約9分
《コラールとトッカータ》は、創価グロリア吹奏楽団の委嘱で生まれた作品。落ち着いた和声の響きと、活発な音楽の対比が魅力です。
コラールの整った和音にはバッハを思わせる雰囲気があり、そこから運動感のあるトッカータへと音楽の性格が変わります。二つの性格がどう結びつくか、構成に注目して聴いてみてください。
演奏を聴く
イル・カロレ・ディ・トレ・リザイエ
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約9分20秒
《イル・カロレ・ディ・トレ・リザイエ》は、三田学園吹奏楽部の第50回定期演奏会を記念して委嘱された作品。熱のこもった音楽が特徴です。
題名は、三田という地名に重ねて「三つの熱い田野」を意味するイタリア語として付けられたもの。力強く提示される動機が発展していく様子に注目してください。
演奏を聴く
吹奏楽のための組曲第2番「イル・フィラート」
作曲:高 昌帥 / 演奏時間:約20分30秒
《イル・フィラート》は、《サンサーラ》に続く吹奏楽組曲第2番。約20分半の中で、緻密に組み上げられた音の流れを楽しめます。
フルート、オーボエ、イングリッシュホルン、クラリネットなど、多くの楽器にソロが用意されています。色彩豊かな各パートの動きと、合奏全体の大きな流れを聴き比べてみたい作品です。
演奏を聴く
コール!119
作曲:高 昌帥
《コール!119》は、消防音楽隊からの委嘱で生まれたマーチ風の作品。消防士の活動を題材にした、ユニークなプログラム曲です。
作曲者の説明によれば、題名は公募によって作曲前に決まりました。非常ベルを思わせる序奏など、消防の仕事を連想させる仕掛けが盛り込まれています。
演奏を聴く
作曲家について
高 昌帥(こう・ちゃんす/1970年生まれ)は、大阪府出身の作曲家・指揮者。大阪音楽大学で作曲を学び、スイスのバーゼル音楽アカデミーにも留学しました。2002年度全日本吹奏楽コンクール課題曲《ラメント》で朝日作曲賞を受賞。吹奏楽を中心に、大規模な交響的作品から協奏曲、室内楽まで幅広く手がけています。大阪音楽大学で作曲教育にも携わっています。
