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パーシー・グレインジャーの代表曲19選|吹奏楽の名曲を演奏動画つきで紹介

イギリスの民謡が持つ素朴な美しさ、自由に変化するリズム、そして管楽器への尽きない好奇心。吹奏楽の歴史に、ほかの誰とも違う個性を刻んだ作曲家が、パーシー・グレインジャー(Percy Grainger)です。

《リンカンシャーの花束》は、吹奏楽の歴史を語るうえで欠かせない名曲。ほかにも《デリー地方のアイルランド民謡》《岸辺のモリー》《子供たちのマーチ》など、現在も親しまれている作品を数多く残しています。一方、《ヒル・ソング》のような実験的な作品では、常識にとらわれない大胆な発想を楽しめます。

この記事では、グレインジャーの代表的な吹奏楽関連作品19曲を、成立背景や聴きどころ、演奏動画とともにご紹介します。民謡による小品から大規模な組曲、特殊な管楽器編成の作品まで、ぜひ気になる1曲を見つけてみてください♪

目次

リンカンシャーの花束

作曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約16分

《リンカンシャーの花束》は、1937年に作曲されたグレインジャーの代表作。イギリスのリンカンシャー地方で採集した民謡を素材とする全6楽章の組曲で、吹奏楽の歴史に残る名曲として親しまれています。

「リスボン」「ホークストウ農場」「ラフォード・パークの密猟者」「元気な若い船乗り」「メルボルン卿」「行方不明の婦人が見つかった」という6つの楽章は、それぞれ異なる表情を持っています。グレインジャーが大切にしたのは、民謡の旋律だけでなく、それを歌っていた人々の声や節回し。とりわけ不規則な拍子が現れる楽章では、自然な歌のリズムがそのまま音楽になっている面白さを感じられます。

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デリー地方のアイルランド民謡

編曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約4分

《デリー地方のアイルランド民謡》は、グレインジャーの美しい緩徐作品を代表する1曲。《ダニー・ボーイ》の歌でも知られるアイルランドの旋律を素材としており、吹奏楽だけでなく、さまざまな編成で演奏されています。

穏やかな旋律が管楽器の柔らかな響きに包まれ、少しずつ豊かなハーモニーへと広がっていきます。華やかな技巧よりも、息の長いフレーズや音色の重なりをじっくり味わいたい作品。なお、グレインジャーの編曲は民謡旋律を用いたもので、歌詞付きの《ダニー・ボーイ》そのものを編曲したわけではありません。

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子供たちのマーチ「丘を越えて彼方へ」

作曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約7分

《子供たちのマーチ》は、1918〜1919年頃に作曲された吹奏楽のための行進曲。原題は《Children’s March: Over the Hills and Far Away》で、親しみやすい旋律とグレインジャーらしい独創的な楽器の使い方が魅力です。

吹奏楽のなかにピアノを取り入れ、さらに奏者たちが歌う場面も登場するという、ちょっと珍しい行進曲。次々と受け継がれる旋律や軽やかなリズムからは、子どもたちが元気に歩いていくような楽しさが伝わります。明るさだけでなく、どこか温かみを感じさせるのも印象的です。

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岸辺のモリー

編曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約4分

《岸辺のモリー》は、アイルランドの2つのリール《Molly on the Shore》《Temple Hill》を素材とした、軽快で技巧的な作品です。もともとは弦楽四重奏のために書かれましたが、グレインジャー自身による吹奏楽版も残されています。

リールとは、アイルランドなどで親しまれている快活な舞曲のこと。この作品では、細かく動く旋律がさまざまな楽器へと受け継がれ、音楽が生き生きと進んでいきます。単に主旋律と伴奏を分けるのではなく、伴奏にも旋律的な面白さを持たせようとしたグレインジャーの工夫に注目したい1曲です。

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シェパーズ・ヘイ

編曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約2分

《シェパーズ・ヘイ》は、イギリスの伝統的なモリス・ダンスの旋律を素材とした作品。グレインジャーはさまざまな編成の版を制作しており、吹奏楽でも親しまれている快活な小品です。

モリス・ダンスは、イングランドに伝わる民族舞踊のひとつ。小気味よいリズムと勢いのある音楽からは、実際に人々が踊っているような楽しさが伝わります。演奏時間は約2分と短めですが、演奏会に明るい変化をつけたいときにも魅力的な作品です。

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コロニアル・ソング

作曲・吹奏楽編曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約6分

《コロニアル・ソング》は、故郷オーストラリアへの思いから生まれた、グレインジャーの叙情的な代表作。民謡をそのまま編曲したものではなく、作曲者自身が生み出した旋律による作品で、吹奏楽版も本人が手がけています。

ゆったりと歌われる旋律と、広がりのあるハーモニーが大きな魅力。音楽が少しずつ豊かな響きへ変化する様子には、温かさと郷愁が感じられます。《デリー地方のアイルランド民謡》と聴き比べると、グレインジャーが旋律を歌わせる音楽をどれほど大切にしていたかが伝わってきます。

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カントリー・ガーデンズ

編曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約3分

《カントリー・ガーデンズ》は、グレインジャーの作品のなかでも特に広く知られている、イギリス民謡による小品。ピアノ版で人気を集め、のちにグレインジャー自身も吹奏楽版を制作しました。

親しみやすい旋律が軽快に展開し、素朴な民謡がユーモアあふれる音楽に生まれ変わります。吹奏楽ではスーザをはじめとする他の編曲者による版も知られているので、演奏を検討する際には編曲者の確認が大切。作曲者本人の版と、後年の吹奏楽編曲は区別しておきたいところです。

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ヒル・ソング第2番

作曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約5分

《ヒル・ソング第2番》は、1907年に作曲された管楽器のための作品。山岳地帯の自然や、そこに暮らす人々の音楽への憧れから生まれ、《ヒル・ソング第1番》の素材も一部取り入れています。

最大の特徴は、めまぐるしく変化する拍子。約5分の作品に非常に多くの拍子の変化が現れ、一般的な行進曲とはまったく異なる音楽の流れを生み出します。グレインジャーは小編成の管楽器版から吹奏楽向けの版まで複数の編成を用意しており、独創的なリズムの世界に触れられる1曲です。

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ヒル・ソング第1番

作曲:パーシー・グレインジャー

《ヒル・ソング第1番》は、1901〜1902年頃に構想された実験的な管楽作品。グレインジャー自身が特に大切にしていた作品のひとつで、一般的な吹奏楽とは大きく異なる楽器編成が特徴です。

初期の編成には、ピッコロ2本、オーボエ6本、イングリッシュホルン6本、ファゴット6本、コントラファゴット1本という驚くほど特殊な管楽器群が指定されています。複雑に絡み合う声部や不規則なリズムは、グレインジャーの自由な音楽観をよく表しています。通常の吹奏楽団で演奏するには編成上の検討が必要ですが、その発想だけでも知っておきたい作品です。

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ガムサッカーズ・マーチ

作曲・吹奏楽編曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約4分

《ガムサッカーズ・マーチ》は、グレインジャーの管弦楽組曲《イン・ア・ナッツシェル》の終曲として生まれた行進曲。「ガムサッカー」はオーストラリアの人々に関わる俗称で、作曲者の故郷を感じさせる題名です。

行進曲らしい勢いを持ちながら、グレインジャー特有の自由で親しみやすい旋律が楽しめます。作曲者自身が吹奏楽へ編曲したのは組曲全体ではなく、この終曲。原曲の管弦楽版と吹奏楽版を聴き比べると、楽器の色彩の変化も面白いでしょう。

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ワムフレイの若者たち

作曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約8分

《ワムフレイの若者たち》は、1905年頃にグレインジャー自身が軍楽隊用に編曲した、初期の重要な作品。もともとは男声合唱と管弦楽のために書かれ、スコットランドとイングランドの国境地方に伝わる物語から着想を得ています。

題材は、国境地帯で争いを繰り広げた人々の勇ましい物語。力強い行進曲の中に、若きグレインジャーの大胆な音楽づくりを感じられます。民間伝承に基づく作品ではありますが、旋律そのものはグレインジャーの創作。単なる民謡編曲ではない点も、この曲を知るうえで大切です。

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民主主義の行進歌

作曲・吹奏楽編曲:パーシー・グレインジャー

《民主主義の行進歌》は、アメリカの詩人ウォルト・ホイットマンの思想などから着想を得た、祝典的な大作。原題は《Marching Song of Democracy》で、もともとは合唱・管弦楽・オルガンのための作品として構想され、1948年にグレインジャー自身が吹奏楽版を制作しました。

この作品で表現しようとしたのは、戦争へ向かう軍隊の行進ではなく、人々が希望を持ってともに歩んでいく姿。堂々と前進するような音楽と、自由に動く声部の重なりが印象的です。一般的なマーチとはひと味違う、グレインジャーの理想が込められた作品として楽しんでみてください。

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ローマの権力とキリスト教徒の心

作曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約12分

《ローマの権力とキリスト教徒の心》は、グレインジャーの大規模な作品のひとつ。原題は《The Power of Rome and the Christian Heart》で、第一次世界大戦中に抱いた、人間の良心と権力との対立についての思いが創作のきっかけになりました。

構想は1918年頃に始まり、長い年月をかけて完成。古代ローマの出来事をそのまま描写する標題音楽ではなく、権力に従うことを求められる個人の苦悩から生まれた音楽です。軍楽隊のほか、オルガンや多様な鍵盤・打楽器などを組み合わせる大規模な編成が特徴で、演奏時には使用する版と必要な楽器の確認が欠かせません。

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不変のド

作曲・吹奏楽編曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約4分

《不変のド》は、グレインジャーのユニークな発想を楽しめる作品。原題は《The Immovable Do》で、音楽が進んでも変わらずに鳴り続ける「ド」の音を中心にした、実験的な仕組みが特徴です。

高い「ド」の音が持続する一方で、その周囲の旋律や和音は次々と変化していきます。同じ音が、背景の和声によって違った表情に聞こえるのが面白いところ。もともとはオルガンなどを想定して生まれた作品ですが、1939年には作曲者自身による吹奏楽版も制作されました。音楽の仕組みを意識して聴くと、いっそう楽しめる1曲です。

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美しきドゥーン川の岸辺

編曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約3分

《美しきドゥーン川の岸辺》は、スコットランドの詩人ロバート・バーンズの詩で知られる歌の旋律を素材とした作品。原題は《Ye Banks and Braes o’ Bonnie Doon》で、グレインジャー自身による吹奏楽編曲も残されています。

ゆったりと流れる美しい旋律と、柔らかなハーモニーが大きな魅力。派手な技巧は前面に出ず、管楽器が自然に歌い交わすような響きを楽しめます。《デリー地方のアイルランド民謡》とともに、グレインジャーが民謡の旋律に注いだ愛情を感じられる1曲です。

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フェロー諸島の舞曲

編曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約3分

《フェロー諸島の舞曲》は、北大西洋に浮かぶフェロー諸島の伝統的な踊り歌を素材とした作品。原題は《Faeroe Island Dance》で、《Let’s Dance Gay in Green Meadow》という歌をもとにしています。グレインジャー自身による吹奏楽版が出版されています。

フェロー諸島では、歌いながら踊る文化が長く受け継がれてきました。この作品には、そうした土地の音楽へのグレインジャーの関心が表れています。華やかな演奏効果だけを追求した作品とは違う、素朴で少し独特な旋律の魅力に耳を傾けてみてください。

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陽気な王様

作曲:パーシー・グレインジャー

《陽気な王様》は、1938年に作曲された管楽アンサンブルとピアノのための作品。原題は《The Merrie King》で、通常の吹奏楽フル編成とは異なる、個性的な楽器の組み合わせが特徴です。

フルートや複数のクラリネットに加え、バスクラリネット、バリトンサクソフォーン、コントラファゴット、トランペット、ホルン、ピアノなどが用いられます。低音の管楽器まで細かく指定した編成からは、グレインジャーがそれぞれの楽器の音色を大切にしていたことが伝わってきます。一般的な吹奏楽曲とは異なる、室内楽としての面白さに注目したい作品です。

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ナイチンゲールと二人の姉妹

編曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約4分

《ナイチンゲールと二人の姉妹》は、デンマークの2つの民謡を素材とした作品。1931年に出版され、グレインジャーが得意とした「エラスティック・スコアリング」という柔軟な編成方法が用いられています。

エラスティック・スコアリングとは、演奏人数や楽器の組み合わせに幅を持たせる考え方のこと。この作品は少人数のアンサンブルから、吹奏楽や管弦楽に近い編成まで対応できるように設計されています。決まった楽器の組み合わせに縛られず、音楽をさまざまな形で届けようとしたグレインジャーの発想が感じられます。

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マールバラ公爵のファンファーレ

作曲:パーシー・グレインジャー / 演奏時間:約3分

《マールバラ公爵のファンファーレ》は、1939年に作曲された金管楽器と打楽器を中心とする作品。原題は《The Duke of Marlborough Fanfare》で、イギリスの民謡を素材としています。吹奏楽や管弦楽の金管セクションによる演奏も想定された作品です。

この作品では、同じ民謡の旋律が異なる性格で2度登場します。最初は遠い過去の戦争の記憶を思わせるように、続いて目の前で繰り広げられる戦いを思わせるように演奏されるという構想です。短いファンファーレでありながら、音楽に大きな奥行きを持たせた1曲。演奏する際には、金管楽器の配置や使用する校訂版にも注目したいところです。

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作曲家について

パーシー・グレインジャー(Percy Aldridge Grainger/1882〜1961)は、オーストラリア・メルボルン出身の作曲家、ピアニスト、民謡研究家。のちにアメリカでも活動し、イギリスをはじめとする各地の民謡を収集・研究しました。《リンカンシャーの花束》《岸辺のモリー》《子供たちのマーチ》などが代表作。自由なリズム、豊かな管楽器の音色、従来の編成にとらわれない独創的な発想で、吹奏楽の発展に大きな影響を与えました。

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